今回は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を抱えている方に向けて、人工呼吸器の必要性について書いていきます。
始めに
『人工呼吸器』と聞くと、ドラマで見るような大きな機械を想像するかと思います。
また、命の危機に瀕した時に使用する、最後の砦という風な印象をもたれると思います。
実際、一般の病院では、人工呼吸器はそういった使われ方をされている事が多いでしょうし、病気によっては、人工呼吸器なしでは命が危険に晒される人もいると思います。
この記事で伝えたい事
しかし、DMDを抱える方にとっては、人工呼吸器は、自発呼吸を少しだけ助けるという意味合いで使用されています。
ただ、これはあくまで、人工呼吸器を導入してから数年にかけての話で、DMDが進行していくと、体を楽にし、長生きする為に人工呼吸器を常に使用しなければなりません。
私が、今回の記事を書いた理由は、これから人工呼吸器を使っていくであろうDMDの当事者の方や、その親御さんに向けて、人工呼吸器を導入することをあまり深刻に捉えすぎないでほしいと思ったからです。
勿論、深刻に考えてしまうのは、普通のことですし、否定もしません。この記事で、少しでも不安な気持ちを和らげられたらと思っています。
人工呼吸器の導入時期
まず、DMDの方が、人工呼吸器を導入する時期は、多くの場合、高校生になってからです。
私が、人工呼吸器を使い始めたのは、高校3年生の時でした。
私が知るDMDの方たちも、高校に入ってから、使い始めています。
人工呼吸器の導入に至るまで
病気の進行による症状
DMDが進行すると、腕や脚などの体の表面的な筋力も衰えますが、それだけでなく、肺や心臓といった内部の臓器の筋力も衰えてきます。
あまりピンとこないかもしれませんが、臓器にも筋肉はあります。
高校生くらいから、臓器の筋力低下は顕著になります。
具体的に、どのような症状が現れるのか書きます。
ただ、私が実際に体感したものしか書いていないので、これが全てではないことをご承知おき下さい。
一つ目が、肺の筋力低下による頭痛・睡眠不足・咳き込んで痰を出しづらくなるという症状です。
これは、肺の機能が衰えることによって、空気中の酸素を吸って、体内の二酸化炭素を放出するという呼吸の循環がうまくいかなくなるからです。
そうなってしまうと、普通に呼吸していても、空気中の酸素を十分に吸うことができないのに、体内の二酸化炭素はあまり放出できず、溜まっていきます。
二酸化炭素が溜まるので、頭痛になったり、脈拍が早くなったりします。
その為、動いていなくても、常に運動をしているかのような状態になり、苦しいので、睡眠も満足に取れなくなるなど、日常生活に支障をきたしてきます。
二酸化炭素が増加する一方で、逆に、酸素量は減ってきます。
体内の酸素飽和度(SpO2)が下がるので、呼吸が苦しくなります。
酸素飽和度の正常値は、95%以上ですが、肺の機能が低下していくと、それ以下になり、危険です。
体験してみないと、そのヤバさは分からないと思いますが、90%を切っただけでも、「息できない!助けてっ」くらいになります。
私は、風邪をひいて、痰が絡みまくって、60%台までいったことがありますが、その世界は想像を絶する地獄です(汗)
苦しすぎて、何も考えられなくなります。
肺の筋力が衰えると、風邪を引いた時に、咳き込む力が弱いので、自力で排痰できなくなります。
痰が溜まると、呼吸できなくなって、大変危険な状態になります。
私も、酸素飽和度が60%台まで下がった時には、すぐに救急車で病院に運ばれました。
私自身もそうでしたが、先ほど書いた肺の機能低下による症状は、最初はなかなか分かりづらくて、危険な状態になって初めて、「こんな事になるなんて、思わなかった…」と感じます。
その時には、排痰に必要な吸引の道具も持ち合わせてなかったので、病院に行くしか方法はありませんでした。
多くの、DMDの当事者さんや、そのご家族も、いざ危険な場面に遭うまでは、何の準備もしていないと思います。
なので、しっかり病気のことを知って、対策できるようにするべきです。
二つ目が、心臓の機能低下による、脈拍の上昇です。
心臓の筋力が衰えるので、弱っている筋力を補おうとして、その分、早く心臓を動かそうとします。
そうすると、脈拍が上昇し、心臓に負荷をかけてしまいます。
人工呼吸器を使わずに、心臓への負担を軽減しないと、不整脈を起こす等の悪影響を及ぼします。
上記の、肺や心臓の症状を放っておくと、毎日苦しくて、やる気や集中力もなくなってしまいます。
体のコンディションを最善に保つことが、DMD当事者にとっては、とても大切で、長生きするのにも必須なのです。
そこで、登場するのが、人工呼吸器です!
人工呼吸器の利点
私が初めて、人工呼吸器を使った時、「こんなのしなくても、呼吸できるのに」と思っていました。
当時の私は、今よりも肺の機能は落ちていなかったので、人工呼吸器は睡眠時だけ使用していました。
日中は、人工呼吸器を使わなくても、楽に呼吸できていました。
なので、最初は人工呼吸器の必要性をよく分かっていませんでした。
しかし、年齢を重ね、肺と心臓の機能が低下してくると、「やっぱり、人工呼吸器って大事だな」と思うようになりました。
人工呼吸器を使用すると、呼吸がとても楽になるからです。
呼吸器なしだと、体力を消費している感が強いのですが、ありだと、「こんな楽なことがあるのか!」と思うくらい、楽ちん♪
人工呼吸器は、使用している本人の呼吸に合わせて、空気を送ってくれます。
自発呼吸だけでは、上手くいかない、酸素と二酸化炭素の循環を助けてくれるのです。
人工呼吸器を使うと、体調が良い時は、酸素飽和度96%以上になりますし、脈も落ち着きます。
頭痛も起きませんし、夜もぐっすり眠れますよ。
余談ですが、人工呼吸器を使うと、気持ちよく歌えるんです。
肺活量も衰えるので、息が続かなくて、上手く歌えず、カラオケに行っても、あまり満足感を得られません。
人工呼吸器で、肺活量を補うことで、かなり満足に歌えますよ!
あと、人工呼吸器を装着して、ダー○ベイダーごっこもできます(笑)
空気を送る音が、ほぼ同じです。
人工呼吸器芸人になれますよ(笑)
実際の人工呼吸器
私が、実際に使用している人工呼吸器がコチラです。
Philips社の『トリロジー 100 plus』です。
思ってたより、コンパクトですよね?
持ち運びしやすいバッグも付いてるので、便利ですよ。
この人工呼吸器は、割と主流な方だと思います。
他社の人工呼吸器を使っている方もいるそうです。
ちなみに、排痰の吸引器も、私はPhilips社のものを使っています。
人工呼吸器はレンタルしていますが、費用は保険適用で、あまり自費負担はかからないと思われます。
人工呼吸器は、口マスク型と鼻マスク型、マウスピース型のどれかを装着して使います。
気管切開している方は、喉のカニューレに人工呼吸器の管を、直接繋ぐことも多いようです。
私は、気管切開していますが、喉には繋がず、鼻マスクとマウスピースを装着してます。
一般的な人工呼吸器のイメージは、鼻マスク型のような、顔に装着するものだと思います。
でも、マウスピース型みたいに、スタイリッシュ(?)なタイプもあります。
私は、夜間寝る時は、鼻マスクを着けて、日中活動する時は、マウスピースを口に咥えています。
人工呼吸器は体の一部
ここまで、人工呼吸器について、書いてきました。
人工呼吸器を使う人をどう思いますか。

人工呼吸器によって、生かされている感じがする。

重い病気の人たちが使うイメージ。ずっと家で過ごしている人たち。
男性の言葉。生かされている感じ。それはよく分かります。
私も、人工呼吸器を使うまでは、そんな印象を持っていました。
だけど、実際に使ってみて、知りました。
生かされているでは、ないんです。
生かされているは、受け身。
機械が勝手に空気を送って、本人の意思に関係なく、生きながらえさせている。
それは、違います。
主体は、私たち、DMD当事者なんです。
私が息を吸おうとして、人工呼吸器が空気を送るんです。
基本的に、私が息をしなきゃ、空気は送られないんです。
生かされているではなく、生きているんです!
人工呼吸器は、あくまで、呼吸の補助役。というより、体の一部ですね。
自分の体の臓器に生かされていると実感することって、あまりないですよね?
それと、同じです。
人工呼吸器は、私の体の一部であり、共に生きている存在なのです。
続いて、女性の言葉。確かに、重い病気の人も多いと思います。
けれども、人工呼吸器を使っている、これから使い始める方たちが、「自分は重い病気だから、人工呼吸器を使うしかないんだ…」って思うのは、ちょっと悲しいし、嫌ですよね。
実は、健常な人の中にも、人工呼吸器を使用している人はいるんです。
命の危機に瀕した人ではなくてね。
例えば、お相撲さん。
全員ではないのですが、太っていると、寝ている時に気管が圧迫されて、呼吸しづらくなるそうです。
そうした時に、人工呼吸器の出番なんですって。
あんなパワフルなお相撲さんも使ってるんですから、「自分は重い病気だ…」と落ち込むことはないですよね!
そして、ずっと家で過ごしている人たちというイメージ。
それも、ちょっと違いますね。
中には、そういう人もいると思いますが、人工呼吸器を使っていても、すげぇアクティブに外出している方はいますよ!
私が尊敬しているDMD当事者さんは、人工呼吸器を着けているのに、新幹線や飛行機に乗って、遠出しまくってますし、飲み屋もよく行くそうです。
お相撲さんや、アクティブ人工呼吸器ユーザーさん、そんな方たちがいるのを知って、勇気や希望が湧いてきませんか?
少しでも、人工呼吸器を使うことを、前向きに捉えていただけると幸いです。
最後に
この記事を読んで、人工呼吸器に対するイメージや、考えは変わったでしょうか。
人工呼吸器=延命という見方ではなく、人工呼吸器=長生きして、自分らしく生活するための体の一部だと思いましょうよ!
皆さんの人工呼吸器ライフを、私は応援します!!
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!!!
ご質問・気になることがありましたら、このブログのコメントやTwitterの方に、気軽にご相談ください。
それでは!
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